相続税の申告
改正「相続税」のしくみ
(8)配偶者に相続させると有利!?
相続税では、配偶者に対して税額を軽減してくれる特例がある。これを「配偶者に対する相続税額の軽減」という。
この特例は、1. 配偶者が被相続人の財産形成に寄与してきたこと、2. 配偶者の老後の生活保障、3. 配偶者の相続がそう遠くないであろうという観点から規定されている。
軽減される税額は、次のとおり。
1. 配偶者の課税価格が1億6千万円、又は2. 共同相続人、受遺者の相続税の課税価格の合計額に配偶者の法定相続割合を乗じて算出した金額とのいずれか多い金額を限度として、配偶者の相続税額から控除される。ただし、この規定の適用を受けるには、次の要件を満たさなければならない。
2. 相続税の申告期限(相続開始後10ヶ月)までに、遺産分割が終わっていること(未分割であっても、申告期限から3年以内に分割をすれば、更正の請求という手続をすることによって、この規定の適用が受けられる)
3. この規定の適用を受ける旨の記載された相続税の申告書を提出すること(課税価格の合計額が1億6千万円以内なので、この規定の適用を受けたら相続税がかからないという場合であっても、申告書は提出しなければならないので注意が必要である)
なお、この規定は、仮装・隠蔽した財産には適用がないことになっているので、「相続財産から除外しておいて、あとでバレたらこの規定の適用を受けて課税逃れをしよう」としても、それは認められない。
ところで、配偶者は法定相続分を相続するのがいいのか、それとも1億6千万円を相続するのがいいのか、よく聞かれるところだが、これは、配偶者が持っている財産の額によって違う。つまり、次(配偶者)の相続税がいくらになるのか、今回の相続税額と合計するとどちらが有利なのかは、シミュレーションしてみて始めてわかるというものなのである。
税金を安くと思うなら、分割を検討する際に、次の相続のシミュレーションもする必要があることを覚えておこう。