相続税の申告
改正「相続時精算課税制度」のしくみ
(17)適用する? しない?
1. 基本的な考え方
相続時精算課税制度は、生前贈与した財産を相続時に持ち戻し(加算)して相続税を計算する制度であるから、財産の価額が上がっていくものを贈与するという場合以外は、基本的に相続税の節税は望めない。相続税の節税をメインで考えるのであれば、この制度を使うよりも、通常の贈与を使った方がよい。
では、どのような場合にこの制度を活用するとよいかというと、
(イ)財産を移転することによって、相続税以外の税(所得税など)の節税効果がある。
(ロ)子供に贈与税の負担なく資金援助をしてやりたい。
(ハ)特定の財産を特定の相続人に承継させたい。
こんな場合であろう。
また、相続税がかからない人であれば、2,500万円までであれば贈与税も相続税もかからないので、ためらわずに使おう。
2. 収益物件の場合
収益物件のように財産が財産を生むものについては、この制度を活用して早期に贈与するとよい。そうすれば、その時点から、親の財産が増えていかず、子供がその収益を享受できるようになる。
3. 財産の価額上昇が見込まれる場合
この制度は、贈与した財産を、相続時にその贈与時の価額で持ち戻しして、相続税を計算する制度である。したがって、贈与時の価額が相続時の価額より低い、つまり、評価が上昇していくと見込まれるものは、早いうちに贈与した方がいいし、逆に評価が下がっていくと見込まれるものは贈与しては損ということになる。
評価が上がっていくと見込まれるものは、早めに贈与しておこう。