相続税の申告

相続税の申告

改正「相続時精算課税制度」のしくみ

(14)どんな人が使うとよいか

1. 相続税がかからない人

相続時精算課税制度とは、一定の直系親族間贈与に認められた贈与の特例で、2,500万円までの贈与には贈与税がかからず、それを超える部分の金額に対して一律20%の税率で贈与税がかかり、その贈与した財産は、相続時に持ち戻しされて相続税の対象に取り込まれる制度である。

したがって、もともと相続税がかからないという人であれば、この制度を使ってもなんらデメリットはないので、積極的にこの制度を使うことをお勧めする。

また、2,500万円を超える財産の贈与をすると、その超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかるが、相続時には還付されるので、早期に財産を移転させておきたいという場合には使っておくとよい。

ただし、贈与税を払うのもいやだし、相続税の申告をするのに費用がかかるからいやだ、というのであれば、先に通常の贈与を使って財産を減らしておき、その後にこの相続時精算課税制度を適用する、といったことも検討するとよい。

2. 相続税の実効税率が20%以内の人

この特例は、贈与財産のうち2,500万円を超える部分に対して一律20%の税率の贈与税が課せられる。

したがって、相続税がかかる人で、その実効税率が20%以内という人であれば、税金を先に払うか後に払うかという違いはあるけれど、早い段階で財産の移転ができ、かつ、計画的に行えるという点で、この制度を活用するメリットがあるといえる。

3. 相続税の実効税率が20%を超える人

この制度は、贈与した財産を相続時に持ち戻して相続税額を計算するので、相続税の実効税率が20%を超える人については、あまり節税効果は期待できないが、次のような効果もあるので検討してみるとよい。

(イ) 収益物件などを贈与すると、そこから上がる収益部分は受贈者のものになるので、贈与者(被相続人)の財産の増加をストップさせることができる。
(ロ) 相続時に持ち戻しするときの財産の価額は、贈与時の価額であることから、将来的に財産の価額が上がる見込みのものを贈与しておけば、値上がり部分には相続税はかからないことになる。
(ハ) 特定の財産を、特定の相続人に確実に承継させることができる。
(ニ) とりあえずは、20%の贈与税の負担だけで財産の移転ができる。