相続・事業承継対策
上手な生前相続対策のすすめ
(8)こんな借地権もある
親の土地の上に子供の建物を建てたら目の玉が飛び出るほどの贈与税が課税された!? ウソのようなホントの話である。もっとも30年ほど前の話であるが・・・ 現在では、親の土地の上に子供の建物を建てたからといって贈与税が課税されることはないのだが、昔は課税されていたようである。
通常、親の土地の上に子供の建物を建てても地代は払わない。つまり、使用貸借がほとんどであると思われる。使用貸借には借地権がないので、課税関係はなく、土地の評価は、更地評価になるのだが、賃貸借の場合には借地権の課税の問題が生じてくる。
つまり、親の土地の上に子供の建物を建てた場合に、借地権課税があるのかないのかを、税務署が一件一件地代のチェックをすることによって確認することが困難であることから、建物を建てたときに借地権相当額の贈与があったものとして贈与税を課税しようということであったようだ。
もちろん、全国的にすべて課税されていたかどうかは別として、このような取り扱いであったということである。この取り扱いは、旧憲法から新憲法に変わったときからのことである。旧憲法の時代には、借地権相当額の贈与税の課税は行われていなかった。
取り扱いの流れは、次のようになっている。
昭和22年5月2日以前
借地権相当額の贈与税課税なし。
昭和33年12月31日まで
借地権相当額の贈与税課税が行われていたとして取り扱う。
昭和39年12月31日まで
① 夫婦、親子などの特殊関係者間における居住用の建物の所有を目的とする土地の無償借受けは借地権相当額の贈与税課税なし。ただし、納税者の申し出により贈与税を課税したものはこの限りではない。
② ①以外の土地の無償借受けは借地権相当額の贈与税課税あり。
昭和42年12月31日まで
① 夫婦、親子など特別近親関係者の居住用家屋の所有を目的とする土地の無償借受けは借地権相当額の贈与税課税なし。ただし、納税者の申し出により贈与税課税されたものはこの限りではない。
② 建物およびその敷地を所有する者から特別近親関係者が建物だけの贈与を受け使用貸借をする場合は、借地権相当額の贈与税課税あり。
③ ①②以外の土地の無償借受けは贈与税が課税されていたものとして取り扱う。
昭和46年12月31日まで
借地権相当額の贈与税課税は行われていなかったものとして取り扱う。ただし、借地権相当額の贈与税課税がされていたものについてはこの限りでない。
昭和47年1月1日以降
現行の取り扱い。借地権相当額の贈与税課税はない。
つまり、昭和42年12月31日までは原則として(居住用を除く場合あり)親の土地の上に子供の建物を建てた場合には、借地権相当額の贈与税課税が実際に行われたかどうかにかかわらず、行われていたものとする取り扱いがされていた。
したがって、相続が発生した場合には、次のように取り扱われていた。
①建物の所有者(この場合子供)に相続が発生した場合建物の価額のみが相続税の対象になる。
②土地の所有者(この場合親)に相続が発生した場合
(イ)建物の所有者が代わっていない場合(子供が存命で所有を続けている)
底地評価
(ロ)建物の所有者が代わっている場合(子供が親より先に亡くなった、または建物を他の誰かに贈与した)
イ. 借地権相当額の贈与税課税がされているときは、底地評価
ロ. 借地権相当額の贈与税課税がされていないときは、自用地評価
このように、昔は親の土地の上に子供が建物を建てると、贈与税が課税されるという取り扱いになっていた。
ここで、もう一度ご自分の土地が該当しないか見てほしい。親の土地の上に子供が建てたアパートなどが建っているものはないか。そのアパートなどは昭和42年までに建てたものではないか。もし、該当するようであれば、その土地は底地の評価でよいことになる。また、過去に子供の建物を建てたときに贈与税が課税されていないか。現行の税制と違うため、見落としがちな取り扱いである。
税額が増えるミスは、税務署は「間違ってますよ」とは言ってくれない。
(『生前遺産分割のすすめ』より抜粋)